■ファンが高じて移住

「『ガルパン』の声優陣が大洗町に訪れる11月の『あんこう祭』には毎年たくさんのファンが集まります。20年は新型コロナの影響で中止されたのですが、19年は過去最高の14万人でした」

 こう話すのは同町役場商工観光課で「ガルパン」関連の案件を担当する大塚正也さんだ。もちろん祭りの日以外にも町を訪れるファンは後を絶たない。

「お店の人と仲良くなって、店の手伝いをしたり、一緒に旅行したりするファンもいるようです。大洗は観光の町なので、町におもてなしの精神が根づいています。何度も足を運んでくださる方を大事にして共に楽しむ。そういうお付き合いができていると思います」(大塚さん)

 大洗マリンタワーの近くにあるダイニングバー「ORACLE大洗」の店長、近藤洋輔さん(35)は、舞台めぐりで何度か訪れるうちに大洗町をすっかり気に入って移住した一人だ。

「舞台めぐりに来てみたら、第二の秋葉原かと思うくらいオタクに優しい町で。みんなで協力して作品を盛り上げようとする姿勢に感動したんです」

 そして初めて大洗町を訪れてから3カ月後、思い切って移住することに。町の人との関係を深めていくにつれ、自分も「ガルパン」を盛り上げる側に回りたいという思いが強くなった。

「ここまで長い期間、町と作品が一緒に楽しみながら歩んでいるアニメなんて、『ガルパン』以外にないですよね。一ファンとして、これからもずっと応援していきたいと思っています」

 近藤さんのようなファンは他にも多くいる。その動きは、地方の町を様変わりさせるほどの力をもっている。

 コロナ禍で今、私たちはさまざまなものが制限されている。だが“好き”という気持ちだけは制限できない。その気持ちがSNSという武器を得て、アメーバのように拡大する。“ファンダム”の動きはとどまるところを知らない。(編集部・藤井直樹)

AERA 2021年1月11日号より抜粋