17年に成立した退位特例法の付帯決議が「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」と「女性宮家の創設等」を速やかに検討するよう政府に求めていた。背景にあるのは皇族数の減少と公務の担い手不足。が、それらについてどんな検討をしたのかはっきりしないまま、「皇女」が急浮上してきた。なぜ?

 女性宮家の創設は、「男系男子による皇位継承」に強くこだわる保守派から「女系天皇」への道を開くと大反対されている。その点「皇女」は皇室の外に出てからの話だから、保守派の人々も賛成できるのだろう。保守派とは安倍晋三前首相のコアな支持層だから、菅義偉首相に代わってもおもんぱかられる存在なのだということがよくわかった。なのに、女性皇族は置いてきぼり。そう思えてならない。

 そもそもから始めるなら、女性皇族は皇室典範で「天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」と定められている。個人的にはこれを「結婚退職制度の明文化」だと思っていたから、「女性宮家」はその撤廃になる道だと期待していた。ただし「人手不足だから退職しないで」と求めるだけでなく、これを機に女性皇族の役割がきちんと検討される。そのことも願っていた。それなのにいきなり、結婚退職後も「皇女」として働く制度。なぜ?

 パートタイム勤務の明文化。そう思った。今どき、結婚→退職→パート勤務とする会社などあるだろうか。「なぜ」ばかり頭に浮かぶが、「期限がきたので、反対の少なそうな答案を出してみました」が答えだと思う。

 20年2月、「安定的な皇位継承策」などへの検討状況を国会で質問され、当時の菅官房長官は「本格的な検討は立皇嗣の礼のあと」と答弁していた。4月の予定がコロナ禍で延期されたが、それも終わった。眞子さまの結婚への強い意志も示された。いくら何でも何かを示さねば、というタイミングで保守派の顔色を見ながら打ち出した。そう見える。

■真面目さにつけ込んだ

 女性皇族への甘えでは、と思ってしまう。「皇女にはなりません。自由にします」と言える女性皇族がいるだろうか。そこにつけ込んだ制度だと感じる。

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