ファッション界では長い間、理想的で完璧な体形を求めるあまり、障害者の存在は無視されてきましたが、日本では東京パラリンピックの影響でパラアスリートの露出が増え、多様性の意識が高まってきました」

 障害や難病の当事者向け情報誌「Co‐Co Life女子部」の編集長で、自身も軟骨無形成症の影響のため身長が135センチの土井唯菜さん(27)は、ここ数年で当事者の意識も変化してきたと感じるという。

 土井さんは、元スタイリストの母親の影響で幼いころからおしゃれを楽しみ、大学でファッションを専攻。卒業後は洋服のお直し専門店アンコトンに就職するなど、ファッションに親しんできたが、同誌の約1900人のサポーター(読者モニター)の中には、障害があるからおしゃれはできないと思い込んでいたり、親や教師から「目立たないように生きていきなさい」と言われたりして、おしゃれと距離を置いてきた人たちも少なくない。だが、SNSや同誌で積極的にライフスタイルを発信する障害や病気の当事者らが現れ、思い込みの殻も破られてきた。

「誰もが気軽におしゃれを楽しめる環境がもっともっと増えていくとうれしい」(土井さん)

 当事者や家族の声は企業を動かし始めている。冒頭で紹介したユニクロの新商品の開発も、カスタマーセンターに届いた声がきっかけだった。当事者家族の座談会では、寝る時間を削って肌着を手作りし、破れても繕って着せ続けている実態があるとわかった。開発者のグローバルMD部、因幡真理子さんは、

「服や肌着に関する苦労は私たちの想像を超えていました。世の中にないものであれば私たちが作るしかないと感じました」

 難しかったのはフィット感。男女兼用のため、160サイズともなると男女の差も大きい。試作品を作っては着用して感想を聞くことを6、7回繰り返し、約1年かけて完成した。

 当事者の声を聞く際に協力を仰いだのが社内の障害当事者ら。同グループでは01年から「1店舗1人以上の障害者を雇用する」方針を定め、現在の国内の障害者雇用率は、法定雇用率(2.2%)を大幅に超える4.7%。社内の多様性が新商品づくりにも生かされた。(編集部・深澤友紀)

AERA 2020年12月28日-2021年1月4日合併号より抜粋