ロスジェネの求職活動の現場にもじわりと影響が出ているようだ。昨年秋から生活保護で暮らし、職探しをしている名古屋市の男性(41)はこう感じている。

「コロナの影響だと思いますが、3月から急激に状況が厳しくなっているように感じています」

■苦労も含めて多様な経験 企業側にも採用メリット

 こんなことがあった。

 緊急事態宣言のさなかだった4月10日、男性は名古屋市内の人材派遣会社の求人にウェブ経由で応募した。5日後に企業側から「ぜひ面接を」と、面接の候補日を複数提案された。男性は希望日を伝えた。

 会社のホームページをチェックしたり志望動機を考えたりしながら備え、当日はスーツを着て面接に向かった。会社に着くと、社員がびっくりした様子だった。面接日程が確定していなかったことがわかった。今思えば、日程確定の連絡さえ会社側からなかった。そして、こんな説明をしてくれた。

「在宅勤務が中心になっているので、未経験の新人を入れても教育ができません。今は採用は難しくなりました。たとえ採用になっても、いつどのタイミングで迎え入れることができるかもわかりません」

 建前だけの面接は行われたが、予想通り、その後の連絡はなかった。

 男性は現状をこう分析する。

「コロナとの因果関係は何とも言えませんが、これまでは応募すると不採用にしろ面接にせよ、1週間程度で連絡が来ていました。ところが今は、応募した当日や翌日に不採用連絡がくることが目立つようになっています。今までそんなことはなく、それだけ厳しくなっているのだと感じています」

 あるとき、ハローワークの担当者に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「確かにコロナ後は、条件面が厳しくなっています」

 スキルや年齢といった条件でハードルが高くなっているということだ。男性は今年に入ってから100社近くの企業にアプローチしているが、今もまだ決まらない。男性はつぶやいた。

「社会に出るタイミングで就職氷河期、その後はリーマン・ショックとコロナです。本当に運が悪いですよね」

 一方で、企業側の採用意欲を促す取り組みを続ける動きもある。

 11月12日に滋賀県主催で行われた企業向けのオンラインセミナー。講師を務めたのは、元大津市議で、現在は氷河期世代の支援を行うパブリックX(クロス)社長の藤井哲也さん(42)だ。

 この日、福祉や電気設備、警備などの業界から8社の担当者が参加した。セミナーで藤井さんは、こう訴えた。

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