多くの人が行き交うスウェーデン・ストックホルムの市街地。マスクを着けている人はほとんど見かけない/10月5日 (c)朝日新聞社
多くの人が行き交うスウェーデン・ストックホルムの市街地。マスクを着けている人はほとんど見かけない/10月5日 (c)朝日新聞社

 ある集団の3分の2以上が感染すると、それ以上は広がらないとされる「集団免疫」。 各国に比べ「緩い」感染防止策をとってきたスウェーデンと日本の現状は。AERA 2020年12月21日号から。

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 全国的な感染者の増加傾向に歯止めがかからず、医療崩壊の危機が叫ばれる新型コロナウイルス「第3波」真っただ中の日本。しかし、日々報告される「新規感染者」の増大をもって、我々人類がウイルスとの闘いに分が悪くなったと断じるのは早急に過ぎる。同じようにロックダウン(都市封鎖)など過激な対策に頼らず、持続可能な穏やかな政策で成果をあげてきたスウェーデンとの比較で、集団免疫について考えてみたい。

 集団免疫とは、ある集団の中で一定数以上が抗体を獲得すれば、感染はそれ以上拡大しないという指標だ。割合は一般的に人口の3分の2以上とされ、ワクチンによって集団免疫を達成する方法としても同等の接種率が必要とされる。したがって、ある地域で感染の拡大によって抗体を持った人とワクチンを接種した人が3分の1ずついれば、その地域は集団免疫を獲得したと考えられる。

■高齢者施設で死者多数

 イギリスは世界中に感染が急拡大していた3月13日に、移動制限などの措置をとらずに集団免疫の獲得を目指すと発表、注目を集めた。しかしあっという間に感染爆発から医療崩壊を招き、10日後に全国ロックダウンを開始。ジョンソン首相自身も感染して一時は集中治療室に入るなど重症化、深刻な事態を招いた。フランスやイタリア、スペインなど他の欧州諸国も軒並み厳しいロックダウンに突入したことは記憶に新しい。

 一方、北欧スウェーデンではロックダウンや学校の休校措置もとらず、飲食店や小売業も営業を続け、マスクの推奨もしない独自の政策を貫き、一時は集団免疫の獲得に近づいたとされるなどの成果をあげた。同国公衆衛生庁の疫学責任者、アンデシュ・テグネル氏は11月2日、日本記者クラブの記者会見にオンラインで参加した。

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