AERA 2020年12月21日号より
AERA 2020年12月21日号より
AERA 2020年12月21日号より。小数点以下は四捨五入しているため、必ずしも合計が100にならない
AERA 2020年12月21日号より。小数点以下は四捨五入しているため、必ずしも合計が100にならない

 途切れることなく不確実なことが続いた、今年一年。 新型コロナは働き方の概念を変え、収入の価値観を変えた。AERA 2020年12月21日号では、2人の「転機」から解を導く。

【コロナ禍の転職で、年収が「上がった職種」「下がった職種」はこれだ!】

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 リーマン・ショック以来の、大減収時代──そんな言葉が大袈裟ではなくなってきた。

 新型コロナの感染拡大により、賃金水準や失業率を表す統計資料には衝撃的な数字が並ぶ。

 日銀が9月に行った「生活意識に関するアンケート調査」では、2020年3月以降の半年間の収入状況について、「勤務日数や勤務時間が減り、給与収入が減った」との回答が23.0%、「勤め先や経営する事業所の業況が悪化し収入が減った」との回答が19.4%に上った。反対に「収入が増えた」人は、わずか2.1%に留まる。

 職そのものを失う人も多い。総務省「労働力調査」によると10月の完全失業者数は215万人で、前年同月より51万人増と大幅に増えた。

 しかし、そんな大減収の時代にあっても、着実に年収アップを勝ち取っていく人がいる。

 東京都の男性(38)は11月、クラウドソーシング事業を手掛ける企業を退職し、ITベンチャーに転職した。マーケティングと営業を担当するマネジャーで、年収は百数十万円の大幅アップ。男性のもとには、このコロナ禍でも、複数の会社からオファーが舞い込んだという。

「今回の年収は自分から提示しましたが、すんなりのんでくれました。いま売り上げを伸ばす企業は、マーケティングや営業の人材を強く求めている印象です」(男性)

 男性はこれまで所属していた2社で、営業やマーケティング部門を主導して新規上場に導いた実績を持つ。前々職では自社ツールの導入社数を5年で50社から500社へと増やし、前職ではのちに看板事業となる新規事業の立ち上げを担当した。

■求人数「減」も年収UP

 実は、株式市場への新規上場は今年も活況だ。今年、国内市場へ上場した企業は11月時点で93社。既に08年以降の最多を更新している。上場に向けて事業を伸ばす力は、もっとも企業が求める能力といえる。

 人材サービス大手のエン・ジャパンで転職仲介サービス「エン エージェント」を担当する藤村諭史さんは言う。

「転職市場全体でみると、4月の緊急事態宣言の時点で求人数は去年の半分ほどになりました。そこから回復しつつありますが、今も昨年比70~75%程度です。しかしリーマンの時とは違って、伸びている企業や業種が少なからずあります。実績のある人にとっては、年収アップのチャンスも少なくありません」

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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