子どもの物──おもちゃや絵本、着替えやオムツなどはもちろん、子どもの工作、ぬり絵、ひらがなカタカナ50音表、学習地図、オムツの箱を再利用して作った棚──そういった子どもの気配を感じさせるものを、リビング・ダイニングルームに極力置かない、置くとしても限られた数を決められたスペースに置く。何も知らずに訪問したら、壁や本棚に飾ってある家族写真を見て初めて「お子さんがいるんですね」とわかるくらいです。

 アメリカ人はふだんから子どもを夫婦と別の部屋で寝かせたり、数カ月に一度は夫婦だけで出かける機会を作ったりと、子どもと大人の生活を意識的に分けている印象です。それが部屋のインテリアにも表れているのではないかと思います。

 さらにアメリカ人にとってリビング・ダイニングルームというのは、半分パブリックスペースのようなところがあります。今はコロナで難しいですが、頻繁に人を招く文化があるので、リビング・ダイニングルームはいつ誰が来てもいいようある程度きれいに整えられていることが多いのです。ベビーシッターや家事代行サービス業者など、外部の人を定期的に家へ上げることも影響しているでしょう。

 日本風の子どもと大人の生活空間が一体化したインテリアも、うまくコーディネートすれば素敵に見えるはずです。また日本人の子どもたちの学力の高さは、リビングやトイレの壁に貼ってある学習ポスターがひと役買っているんだろうなとも思います。ある程度散らかった部屋のほうが子どもの創造力が伸びるなんて話もありますよね。ただ、もし親が「部屋がめちゃくちゃでイライラする!」と日々ストレスを感じているのだったら、子どもの物はすべて別のスペースに押し込む、というのは一つの手だと思います。

 私もアメリカ人の家がすっきりしている理由に気づいてからは、「子どもの物はすべて子ども部屋へ」を心がけるようになりました。といっても雨後の筍のように次々現れるのが子どもの小物ですが、「寝る前におもちゃは全部部屋に持っていくこと」と子どもに言い聞かせるようにしています。

 その結果直面しているのが、「リビング・ダイニングは片づくけれど、子ども部屋は散らかり放題問題」です。この問題は、一体どう解決したらいいのでしょう。やはり日本人式に年末大掃除をするしかないか……とため息をついている、師走の半ばです。

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◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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