「メリットは、自宅を手放すことなく資金の借り入れができること。一時的に収支が崩れたのであれば、リバースモーゲージでお金を借りて乗り切る手もあります」

 リバースモーゲージには「リコース型」と「ノンリコース型」の2種がある。「リコース型」は残債を相続人が負担しなければならないタイプ。一方の「ノンリコース型」は、金利は高めになるが、相続人が残った債務を返済する必要がない。

「リースバック」という手法もある。これは「売却」と「賃貸」を組み合わせた不動産取引で、自宅をいったん不動産会社に売却し家賃を払って引き続き住み続ける。50歳未満にも対応していて、売却益を老後の生活や事業資金などに活用できるメリットがある。

「業者が物件の買い取り価格と家賃を提案してきますが、妥当性を見極めるために複数社で見積もったほうがいいでしょう」

 12月1日から適用された「新型コロナ特則」を使う手もある。国の指針「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(被災ローン減免制度)が改定され、10月末に成立した。

 同ガイドラインはもともと、東日本大震災を機に自然災害でローンを返済できなくなった個人の生活再建を支援する目的で16年4月に運用が始まったもの。今回、コロナ禍によって債務の返済に困っている人に向けて運用を開始した。

 対象者は新型コロナウイルスの影響で、失業したり収入・売り上げが減少したりしたことなどで債務返済が困難になった個人と個人事業主。住宅ローン以外の債務の免除や減額を申し出ることができ、弁護士の紹介を受け、自宅を残すこともできる。何より大きなメリットは、この特則を利用して債務整理をすると、個人信用情報としてブラックリストに登録されない点だ。

「住宅ローンの返済が滞る前に手を打てば、できることは多くあります。また、住宅費だけではなく、教育費支援の利用や、通信費や保険料といった支出の削減などでも家計の収支は改善できます。住宅ローンの返済余力を増やせば、乗り切れる可能性は高くなります」

 新型コロナウイルス感染終息の兆しはいまだ見えないが、いま住宅ローンの支払いで苦境に陥っていない人であっても、住居喪失は決して他人事ではないと話す。

「長寿化もあり現役世代の生涯収支を試算すると、実は多くの人がマイナスになる可能性があります。どこかで生活が破綻する恐れは多くの人にあると考えています」

 住まいが持ち家であっても賃貸であっても、それは同じだ。破綻しないためには、生涯の収支をシミュレーションすることだという。

「生涯収支がプラスになる支出の目安を決め、それに沿ってコントロールされた筋肉質な家計にしておく。手元の資金を厚くしておくことで、感染症や災害などさまざまなリスクに対しても対処が可能になります」

※【減収しのぐカギは食費にあり エンゲル係数を下げる「3対1」法とは】へ続く

AERA 2020年12月14日号