寒くなってくるにつれ、命の危険を感じるようになった。10月下旬、先の「ほっとプラス」につながり、同法人が運営する宿泊施設に入ることができた。先日、生活保護の受給が決まり、近くアパートに移り住むことができるという。男性は言った。

「家があって、食べるものがあって、風呂にも入れて、人として最低限の生活をすることが、今の望みです」

 先の高野さんは言う。

「住居は生活の基盤です。それを失うということは、生活自体が成り立たなくなるということ。民間の力には限界があります。国は、住居確保給付金の延長とともに、住居をなくした時の住居の確保はもちろん、生活保護に至らなくてもその手前でアパートに入るためのお金を提供する支援が必要です」

 住まいを失うことは、命の危機に直結する。コロナ禍は、非正規雇用や若者、病を持つ人など、社会的弱者をシビアに襲う。支援や政策、社会全体での助け合い、あらゆる手段を駆使しなければ、住居喪失の危機は避けられない。対策は待ったなしだ。(編集部・野村昌二)

AERA 2020年12月14日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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