■ステロイド剤に効果

 新型コロナウイルスの増殖がもっとも盛んなのは症状が出始める前後とされ、入院した時点では、増殖期は過ぎていることが少なくないため、レムデシビルの効果が期待できる時期を過ぎていることが少なからずある。

 しかし、米国のNIHのガイドラインはWHOの非推奨が出た後も引き続き、中等症以上の患者の治療の第1選択肢にレムデシビルを挙げる。NIHのガイドラインについて土井さんは、こう解説する。

「米国のように感染者が多い先進国では、退院が数日でも早まればその分、次の患者を受け入れられるので、国全体での効果が大きいという考え方もあり得るのではないだろうか」

 現時点で、大規模な臨床試験によって重症患者の死亡率を下げる効果が明らかに確認されたのは、ステロイド剤だけだ。ステロイド剤は、免疫を抑制し、炎症を抑える薬として半世紀以上使われている。薬価も安い。

現在、富士フイルム富山化学が承認を申請中なのはファビピラビル(商品名アビガン)だ。承認されれば、レムデシビルに次いで、新型コロナウイルスに特化した薬となる。

 ただし、アビガンも死亡率を下げる効果は確認されていない。もともとは新型インフルエンザ薬として開発された。156人が参加した臨床試験では、PCR検査で新型コロナウイルスが検出されなくなるまでの日数が、偽薬の場合より2.8日短くなった。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2020年12月14日号より抜粋