国内で唯一承認されている新型コロナウイルスに特化した治療薬「レムデシビル」の製造ライン(写真:ギリアド・サイエンシズ提供)
国内で唯一承認されている新型コロナウイルスに特化した治療薬「レムデシビル」の製造ライン(写真:ギリアド・サイエンシズ提供)
AERA 2020年12月14日号より
AERA 2020年12月14日号より

 国内で唯一承認されている、新型コロナウイルスに特化した治療薬、レムデシビル。 WHOは11月中旬に「使用を推奨しない」と発表した。それでも逼迫した医療現場で投与が続く。AERA 2020年12月14日号から。

【グラフ】重症者の推移はこちら

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 新型コロナウイルスの感染者の増加に伴い、重症化する患者数も増えている。過去1カ月で2倍以上になった。

 中等症や重症になると、肺炎などが起きて肺の働きが低下し、血中の酸素濃度が下がる。さらに悪化すると、肺以外の臓器の働きも低下することがある。治療では、口や鼻から酸素を補給したり、それでも足りなければ人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)をつけたりして呼吸を補う。加えて、薬による治療も行われることが多い。

 ただ、新型コロナウイルスに特化した治療薬として現在、国内で承認されているのは「レムデシビル(商品名ベクルリー)」だけだ。米食品医薬品局(FDA)が緊急使用を認めたのを受け、国内でも5月、審査を簡略化した「特例承認」により承認された。

 日米で承認の根拠となったのは、米国立保健研究所(NIH)が主導し、日本の病院も含めて複数の国の病院の患者1062人が参加した臨床試験だ。レムデシビルを投与された患者は回復するまでの日数が中央値で10日だったのに対し、偽薬を投与された患者は15日で、5日早かった。治療効果は、軽度な酸素補給が必要な、中等症の患者でもっともはっきりとみられた。人工呼吸器などが必要になるほど重い患者や、逆に軽症の患者では差はみられなかった。

■「効果ない」根拠もない

 ところが、世界保健機関(WHO)は11月20日、治療薬ガイドラインの第2版を発表し、入院患者に対するレムデシビルの投与を推奨しないとした。改定の根拠としたのは、WHO主導で30カ国の約1万1300人が参加した臨床試験「SOLIDARITY(連帯)」の中間報告を主体に、NIH主導のものも含めた4種類の臨床試験だ。

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