エサをもらえることを知って、人に寄ってくる池の鯉(筆者撮影)
エサをもらえることを知って、人に寄ってくる池の鯉(筆者撮影)

 海の中の生き物として、哺乳類であるイルカやクジラが、とても高いレベルの知能を備えていることは皆さんご存じかと思いますが、魚の知能レベルについてはどう思いますか?

【写真】身を守るためウロコが進化したハリセンボン

 知能を何で測るのかは難しいですが、例えば記憶力についてはどうでしょうか。

 映画「ファインディング・ニモ」シリーズに登場する忘れっぽいキャラクター「ドリー」の影響なのかはわかりませんが、「魚は記憶力が弱い」と思われている方も多いようです。ですが、実際、魚の記憶力はなかなかのものなんです。

 魚の記憶力に関しては、過去、多くの実験が行われています。例えば、金魚に対して、一定の時間にレバーをつつくと餌を与える訓練を行ったところ、金魚は一定の時間になるとレバーの周りに集まってくるようになったとのことです。

「お腹がすいたなぁ。そろそろご飯を食べにいつものところへ行こうか」といった感じでしょうか。

 また海の中で、特定の金属音を聴かせた後に餌を与える習慣を1カ月ほど繰り返した後、それらの魚を海に放ち、半年ほどして同じ金属音を海中に流したところ、多くの魚たちが集まってきたそうです。

 これらは有名なパブロフの犬の実験と同じで、一定の条件下で何らかのご褒美を与えられることを学ぶと、哺乳類に限らず、魚たちもそのことを学び、記憶するんですね。身近なところでは、池の鯉も同じですよね。

 逆に考えると、命にかかわるような危険な目にあった魚は、そのことを覚えていて、そうした場所には近づかないということになるんでしょうか。

 他にも、レインボーフィッシュを使った実験では、魚を網の中に閉じ込めて、一カ所に脱出できる穴をあけておくと、数回の試行で穴から脱出することを覚えたそうです。

 そして驚くことに、1年後に同じ魚に同じ実験をしたところ、穴の場所を覚えていて、すぐに脱出することができたそうなんです。「1年くらいなら覚えていても…」と思われるかもしれませんが、レインボーフィッシュの平均寿命が2年程度と言うことを考えると、我々人間に例えると数十年前の穴の場所を覚えていたということになるかもしれません。

 数カ月前に行ったお店に行くのにたどり着けず、結局Google Mapに頼ることの多い筆者からすれば、すごい記憶力と感心するしかありません。

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岡本浩之

岡本浩之

おかもと・ひろゆき/1962年岡山県倉敷市生まれ。大阪大学文学部卒業後、電機メーカー、食品メーカーの広報部長などを経て、2018年12月から「くら寿司株式会社」広報担当、2021年1月から取締役 広報宣伝IR本部 本部長。

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