一方、沖縄出身の國場幸之助衆院議員(自民)は、普天間飛行場の危険性除去が重要と訴える。

「単に辺野古をやめて普天間を放置するということでは、納得のいかない宜野湾市民も多いと思います。水深が深く、難工事が予想される大浦湾の埋め立てに時間がかかるのであれば、いま埋め立てが進んでいる浅瀬の側を利用して段階的に普天間の機能を辺野古に移していく選択肢もあるのではないかと思います」

■移設「中止」では済まない

 沖縄にとっては、辺野古移設計画を中止させられればよし、で済む話ではない。市街地の真ん中にある普天間飛行場の運用停止、返還をどう実現させるかという難問の解決が不可欠なのだ。

 沖縄県の玉城デニー知事は、普天間飛行場の閉鎖・返還を辺野古新基地建設と切り離す必要性を強調しているが、政府は具体的な言及を避け続けている。

 留意しなければいけないのは、米側には辺野古新基地が完成しなくても普天間飛行場が使えればよい、との考えがあることだ。沖縄にとって悪夢は、辺野古での段階的使用が始まっても普天間は残る、というパターンだ。前出の野添さんは言う。

「海兵隊の新戦略では、中国をにらんで沖縄に駐留する第三海兵遠征軍が最も重要になることも変わりません。ただ、新たな戦略では固定した基地に依存しない分散された小規模の兵力で作戦するということを想定しています。この新戦略をいかにうまく使えるかがカギです」

(文/編集部・渡辺豪)

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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