AERA 2020年12月7日号より
AERA 2020年12月7日号より

「待ったなし」のはずが、政府は策を講じることなくずるずると先送りにした。 医療の現場からあがる「責任放棄」の声を、国はどう受け止めるのか。AERA 2020年12月7日号から。

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※【分科会委員「官邸に嫌がられても提言しなければ…」 コロナ対策の遅れに“日本モデル”の影響】より続く

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 自治体中心に進む感染防止策だが、北海道はこの「第3波」を受けて、すでに条件付きで札幌市内での不要不急の外出と、札幌市と道内他地域との往来について、自粛を求めている。大阪府も、大阪市内の一部の飲食店に営業時間を午後9時までに短縮するよう求め、東京都では25日に、酒類を提供する飲食店やカラオケ店への営業時間短縮を要請すると決めた。28日から12月17日までの20日間は島しょ部以外の都内全域で午後10時までに店を閉めるように求める。

 しかし、こうした要請について「根拠がない」と指摘するのは、早稲田大学大学院の片山善博教授だ。対策のための特別措置法の24条9項では、「都道府県対策本部長は(中略)公私の団体又は個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる」とある。

 これは自粛を求めるためのものではなく、対策本部の体制を整えるときの規定で、「公私の団体又は個人」とは医師会や感染症の専門医などが想定されているのだという。

「国が解釈を誤って全国に伝え、マスコミも増幅させました。何が言いたいかというと、新型コロナの対応についてはこれまでの教訓や反省点を今日にいたるまでほとんど解決せずに持ち越し、備えてこなかったということです」(片山教授)

■提言から「消えた」言葉

「Go To トラベル」の見直し一つとっても、片山教授は驚きを隠せなかった。

「キャンセル料の取り扱いで混乱している様子は、スタートのときとまったく一緒です。感染が増えて立ち止まるときのルール作りさえしてこなかったわけです。撤退のすべを知らないのも、日本の権力者の習性でしょうか」

 菅首相が当初から経済再生とともに両立させるべき最優先の課題としていた感染拡大の阻止は、待ったなしだ。が、政府の危機管理意識を疑わざるを得ない情報もある。分科会の25日の提言についてだ。

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