■安倍答弁は「ステーキ」

 菅政権になって、与党席からの首相答弁に対する賛同の野次は明らかに少なくなった。

 辻元氏は「菅首相は、国民に本当のことを話せない時ほど言葉が少ない」と分析。象徴的だったのが、名簿は事前に見ていないと断言していた菅首相が、事務方の差し紙をきっかけに答弁を翻し、事前に事務方から説明を受けていたと答弁を修正した場面だという。

「誰から(6人を拒否すると)説明を受けたのですかとただすと、渋々、杉田和博官房副長官と白状した。官邸の戦略的には絶対に出してはならない名前だった。事務方は焦ったと思いますよ。安倍さんだったら、のらりくらりと絶対にごまかしたと思います」

 さらにこう続ける。

「できるだけ国民の前で嘘はつきたくない、という菅さんの本音がにじみ出た瞬間でした。その意味では、普通の人が総理になったんです。安倍さんはコテコテの脂ぎったステーキのようでしたが、菅さんはサラサラッとしたお茶漬けかな。実は味わい深いのか味がなくて物足りないのかは、まだ判断できませんが」

 自民党の一部からも菅首相の答弁を不安視する声が上がる。そうした声が「支持率が高止まりしている間に解散総選挙を」という早期解散論の根拠となっている。実際、政権発足直後の9月の内閣支持率は65%。学術会議問題で落ちたものの11月でも56%だった。早期解散の場合、来年度の予算成立後のタイミングが有力とみられている。

 年内の首相出席の予算委員会は残りわずか。事務方の答弁書に頼るのではなく、自分の政治観、国家観を国民に説明してほしい。(編集部・中原一歩)

AERA 2020年11月30日号