福岡伸一が振り返るノーベル物理学賞「ブラックホールの存在証明となった経緯」

福岡伸一の新・生命探検

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2020/11/19 07:00

福岡伸一さん(c)朝日新聞社
福岡伸一さん(c)朝日新聞社

 過日、今年のノーベル賞が発表された。ご存知のとおり、科学3賞は、医学生理学賞が、C型肝炎ウイルスの発見、物理学賞が、ブラックホールの発見、化学賞が、ゲノム編集技術、とそれぞれ前評判が高かった研究が受賞した。選考委員会が、今年勃興したウイルス問題をことさら意識したわけではないだろうが、ミクロ、マクロ、テクノロジー、とバランスもよかった。医学生理学賞(10月6日配信)とゲノム編集(10月8日配信)については、それぞれ朝日新聞紙上また朝日新聞デジタルで論評したので、興味がある方は参照していただきたい。

 ここでは物理学賞の受賞者、英オックスフォード大のロジャー・ペンローズについて触れてみたい。

■太陽の約400万倍の巨大質量

 ペンローズは、独マックスプランク地球外物理学研究所のラインハルト・ゲンツェル、米カリフォルニア大ロサンゼルス校のアンドレア・ゲズとの共同受賞。役割分担は、ペンローズがブラックホールの理論的予測、ゲンツェルとゲズが実験的実証(観測)である。

 ペンローズは現在、89歳。1965年、アインシュタインの一般相対性理論をもとに、重力が極めて強く、光さえも吸い込んでしまう特異点、すなわちブラックホールが、星が超新星爆発を起こした跡に、存在しうることを理論的に導いた。

 ゲンツェルとゲズは90年代初頭から長年に渡って、チリと米ハワイの巨大望遠鏡で天の川銀河の中心を精密に観測し、周辺の星が、ある地点に向かって猛スピードで動いていることを発見した。そのスピードは非常に強い重力源がないと説明がつかないため、銀河の中心に太陽の約400万倍の巨大質量を持つ、目に見えない天体があると考えた。これがブラックホールの存在証明となった。

■ガラスの天井を打ち破った

 ゲズは、マリー・キュリー以来、ノーベル物理学賞を受賞した4人目の女性である。医学生理学賞、化学賞に比べ、物理学賞の女性受賞者は少ない。数学のフィールズ賞も同じだ。しかしこれは女性が物理・数学に弱いためでは決してなく、これらの分野が男性優位社会であり、女性の参入を阻んできたからである。今後、科学におけるガラスの天井を打ち破る女性研究者たちが次々と現れてくるだろう。

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