だが悲観する必要はない。ネアンデルタール人やBCGと新型コロナの関係のように、当該の病気とは何の接点もないように思われる要因との掛け合わせが治療薬開発のヒントになった例は実際にある。
飯村教授は17年、李助教らとともに、HIV治療薬の標的分子である「CCR5」という遺伝子が骨の代謝も調節していることを解明。これにより、HIV治療薬が、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)を始めとする骨吸収性疾患に対してもメリットをもたらす可能性を明らかにした。
「HIVに感染した人は骨粗鬆症になりやすい、と1990年代から言われていたのですが、HIVと骨粗鬆症の研究は全く別の方向で進められていました。そんな中、私たちが相関関係に着目して研究を進めたことで、ポンとつながったんです」
新型コロナをめぐる「ファクターX」は一つではないかもしれない。だが、世界の研究者が多面的な切り口で相関関係を指摘するのは、治療薬の開発に欠かせない道程なのだ。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2020年11月16日号