「ビジュアルで見せるインスタグラム上で新製品を探す習慣があったため、EC機能でそれをもっと便利にしました」

 なぜ、日本を重視するのか。

「日本でのインスタグラムの使われ方は独特で、その文化を知りたいのです。ハッシュタグも世界平均の3倍の量を使っています。趣味や関心に応じてアカウントを使い分け、表現する力はずば抜けています」

■短尺動画に「熱視線」

 インスタグラムならではの特徴といえば、写真や動画の加工の手軽さだろう。スマホをタップするだけでセピア色にしたり、文字を流せたり。表現の幅広さから、新しいもの好きの若者ユーザーの心もがっちりつかんでいる。スパルターさんが言う。

「関心があるものとつながれることに加えて、自己表現ができる。作り手として、ユーザーがどれほど創造性を持てるかということを大切にしています」

 米国製のサービスが席巻するなかで近年話題に事欠かないのが、中国製アプリだ。オラクルとマイクロソフトが買収劇を繰り広げたTikTok(ティックトック)など動画サービスにも注目が集まり、インスタグラムでも今年、30秒の動画機能「リール」をリリース。

「短尺での表現をインスタグラムにいるクリエイターに活用してもらいたいと思っています。今後、彼らがどう広げていくのかが楽しみです」

 スパルターさんはリール導入の狙いをそう語り、こう続ける。

「様々な変化を遂げてきましたが、情熱を持ったクリエイターと受け手をつなぐという軸は変えたくありません。気持ちよく表現し、シェアできる空間を守ることが大切だと感じています」

 インスタグラムの前身となるアプリ「バーブン」は、位置情報の共有を目的として産声を上げた。それから10年以上が経った。インスタグラムは世界中のクリエイターの居場所になっている。(編集部・福井しほ)

AERA 2020年11月16日号

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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