本塁打と打点でリーグトップを走る巨人の岡本(左)と、打率トップのDeNA佐野。若き4番打者たちの活躍が球界を盛り上げた (c)朝日新聞社
本塁打と打点でリーグトップを走る巨人の岡本(左)と、打率トップのDeNA佐野。若き4番打者たちの活躍が球界を盛り上げた (c)朝日新聞社
AERA 2020年11月16日号より
AERA 2020年11月16日号より

 開幕が大幅に遅れ試合数も短縮されたプロ野球で、多くの若手が4番に座った。 球界を盛り上げた彼らの活躍の背景には、チーム戦略の変化がある。AERA 2020年11月16日号から。

【表】今年活躍した若手4番打者はこちら

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 コロナ禍によって開幕が3カ月遅れ、143試合から120試合にレギュラーシーズンが短縮された2020年のプロ野球も、いよいよ最終盤を迎えた。今季を象徴するのは、セ・リーグの若手4番打者の台頭であり、大ブレークだ。

■鳴り物入りでなくても

 原稿執筆時点では巨人岡本和真(24)が本塁打と打点の2冠の座にあり、本塁打王争いは大山悠輔阪神、25)と村上宗隆(東京ヤクルト、20)が猛追する。そして打率トップは、米国に渡った筒香嘉智に代わり、横浜DeNAの「つなぐ4番」として活躍を続ける佐野恵太(25)だ。入団4年目ながらラミレス監督にキャプテンに任命され、4番の定位置と責任を与えられた。

 ドラフト9位という下位指名だった佐野を除けば、名を挙げた選手はいずれも1位指名を受けて入団した。が、いわゆる“鳴り物入り”だったわけではない。村上は清宮幸太郎(北海道日本ハム)の外れ1位であったし、白鴎大学の大山を阪神が指名した時は、「1位でなくても獲得できたのではないか」という思いが巡った。

 こうした入団から数年目の生え抜き4番が活躍する現象は、球界全体が「カネ」で選手を集めるのではなく、長期のビジョンに立ち、自前で選手を育てる「育成重視」の編成に大きくシフトしてきた証左だ。

 智弁学園出身の岡本は、右の大砲候補として3年目までは主にファームで暮らし、4年目の18年に才能を開花。89代目の4番となり、33本塁打を放った。内野の守備には多少目をつぶっても、高橋由伸前監督、原辰徳現監督は本塁打だけでなく、状況に応じたチームバッティングに徹することのできる岡本を起用し続けた。首脳陣の我慢に応えるように、今季は自身初のタイトル獲得が濃厚だ。

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