将棋に才能は関係ない。努力で全てカバーできる」という持論で将棋に全てを捧げ、「軍曹」の異名を持つ永瀬王座は、文字通り徹底した努力で人生を切り拓いてきた。2学年下の佐々木勇気七段(26)が優勝、同い年の菅井竜也八段(28)が準優勝した小学生名人戦では、東日本大会の1回戦で敗退した。

「棋士になるような才能の子たちは一生戦っていくんだけど、子供時代に決まった格付けが逆転することはあまりない。永瀬王座は『自分より強い天才が同世代に何人もいた』と言っていましたが、全てを努力で抜き去っていった。すごい根性です」(松本さん)

 棋士になってからは対局がない日も相手を探し出して休みなく毎日練習対局を続けてきた。その永瀬王座と藤井二冠は今、お互い練習パートナーとして全幅の信頼を置いている。

「コロナ禍の4、5月も25局やったそうです。オンラインで指したり、永瀬さんが藤井さんの師匠の杉本昌隆八段の名古屋の自宅まで出向いたりしていたようですね」(松本さん)

 小学生名人戦に出場する以前に、プロ養成機関の新進棋士奨励会に入会したダントツの天才と、「才能不問」と言い切る当代一の努力家のコラボレーション。これに勝る相性は、そう探し出せるものではない。だから将棋は面白い。(編集部・大平誠)

AERA 2020年11月16日号より抜粋