<個性がすっごい強いもの。今、マコちゃんのような個性の人なんてなかなかいませんよ>(水野久美)、<あの当時はマコちゃんに代わる風貌の俳優がいないんだよね。ポーズをつけて立つのがまた格好いいんだ>(岡本みね子)

「佐藤允の本であると同時に夏木さんや水野さんの本でもあるんです。こだわったのは年齢を重ねることも称賛したかったので皆さんの現在の写真を大きく入れたんですよ」

 佐藤允が好きな映画は意外にもフランス映画だ。俳優を志すきっかけが映画史上の名作「天井棧敷の人々」だった。80年代にパリに取りつかれ「街は眠った」というシナリオを書いて映画化を夢見ていたという秘話も興味深い。

 圧巻は60ページに及ぶ10代から70代までの出演作品フィルモグラフィーで、闘介さんが父の姿を振り返りながら解説。こんなに素敵な俳優が映画界にいたんだと、胸が熱くなり、元気になる一冊!

(ライター・田沢竜次)

■八重洲ブックセンターの川原敏治さんオススメの一冊

『電池の覇者 EVの命運を決する戦い』を読めば、電池産業がさまざまな業界の縮図であることがわかる。現在のビジネス全般の問題点を考えさせられる一冊だ。八重洲ブックセンターの川原敏治さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

*  *  *

 日本は長年、乾電池、リチウムイオン電池の開発に大きく寄与し、電池産業をリードしてきた。しかし、いつしか電池産業の競争のメインは自動車用電池へと移行。現在は、さまざまな業種からの参入、さらには韓国、中国などの他国の追い上げにあっている。

 著者が長年、自動車用電池の開発現場にかかわってきたことから、本書ではそんな電池業界の経緯が細かく描かれ、同時に今後の危機感や日本への期待もよく伝わってくる。

 今やあらゆるものを動かす電池は製造業の根幹ともいえるようになった。電池に限らず、多ジャンルからの参画、グローバルな競争の問題や開発における資金面、方向性、安全性などの問題は各業界共通であり、さまざまな業界の縮図と見ることもできる。電池産業を見るということは、現在のビジネス全般の問題点を考えることでもあるのだ。

AERA 2020年11月9日号