「我々は欧州の一部であり、残念ながら新規感染者は増加傾向にありますが、厳しい規制を近いうちに導入する計画はありません。今春の経験で医療体制が格段に強化されたからです。医療従事者の経験値も上がり、必要な病床数や機器も確保されています」(ガルージン大使)

 それでも一定の規制はあり、モスクワではナイトクラブに入店するにはあらかじめQRコードによる登録が必要だったり、サンクトペテルブルクではレストランの深夜営業が停止になっていたりするという。マスクの着用が求められ、至る所で検温が実施されるなど、日本とよく似た状況のようだ。

 日ロで共通するのは、感染者数に対する死亡率の低さだ。ロシアは累計感染者157万人に対して死者は1.7%の約2万7千人、約10万人が感染した日本の死者は1748人でやはり1.7%だ。米国とフランスの死亡率が2%台後半、英国は4.8%、イタリアが6.4%ということを考えれば、日ロは一定程度、コロナ対策に成功したとの評価には値するだろう。

 民族も人種も性別も国も関係なく、等しく地球規模で人間の生命を脅かし、経済を破壊し人の移動や接触を妨げる新型コロナウイルスとの闘いは、一国で解決できる問題ではない。ましてや覇権争いなどとは無縁でなければ、人類がウイルスに敗れることは必至だ。(編集部・大平誠)

AERA 2020年11月9日号より抜粋