AERA 2020年11月9日号より
AERA 2020年11月9日号より

 入社と同時にリモートワークを命じられる例も多かった今年の新入社員。つらさ、苦しさ、焦り……。本音の中から改善点が見えてくる。AERA 2020年11月9日号では、入社直後のリモートワークに孤立感や焦りを感じる新入社員たちに話を聞いた。

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 飲料メーカーに勤める新入社員の女性(23)も、精神的な孤立感に悩まされた。人と話すのも、誰かと一緒にいるのも大好きで、新生活を楽しみにしていたという。しかし、入社以来ずっと在宅勤務。画面越しに相手の顔は見られるものの、孤独を感じた。初めての一人暮らしで、大学時代はいつも顔を合わせていた家族もいない。

「狭い家にひとりで、ほかの社員とも画面越しでしか話せない。オンライン上ではつながっているはずなのに、孤独でした。入社して2カ月くらいは寂しくてしょっちゅう泣いていました」

 ちょっとした質問や雑談がなかなかできない。ミーティングが終わるとリモートのつながりもシャットアウトされ、自分だけの空間になる。そして、特につらかったのが同期を頼れないこと。仕事の悩みを共有し、励まし合い、一番頼れるはずの同期社員。しかし、入社式で一度顔を合わせて以降は画面越しにしか会えていなかった。

「気軽に頼ることもできませんでした。一方、ほかの同期が配属された部署は出社する機会が多く、研修終了後も完全在宅だったのは私だけ。私が誰とも仲良くなれずに悩んでいるなか、同期社員は出社して、同期同士でも先輩スタッフともコミュニケーションをとっている。取り残されたようで、自分だけが孤独だと思った。ものすごく寂しかったです」

 緊急事態宣言が明け、同期社員で集まる機会を持てるようになったことで孤独感は徐々に解消されたというが、あの状況が長く続けばどうなっていたかわからないと振り返る。

■「充実の研修」のはずが

 広告関連企業に入社した男性(24)の悩みは、半年たった今も仕事を覚えられていないこと。約1カ月の集合研修と3カ月の職場での研修をリモートで終え、8月1日、研修を行っていた部署にそのまま本配属された。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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