「この交流会で何度も話しているので、皆さんご承知だとは思いますが、僕は2回、夜逃げをしているんです」

 1回目は実家のコンビニを店じまいした際、2回目はパチスロで借金を作り、追い込まれたのが原因という。その後メンタルの病を抱え、人間関係もほぼ断っていたが、5年ほど前にもう一度人生をやり直そうと、リアルの異業種交流会に参加し始めた。しかし、ぐったり疲れて名刺の束しか残らない、ということの繰り返しで人脈の構築にはつながらなかった。ところがコロナ禍以降、リモート形式の交流会に参加したところ思いのほか楽しく、毎日のように参加するうち、仲間も増えたという。

「今も会社ではほとんど話をしないのですが、Zoomだと自宅から参加できるのでリラックスして心を開け、対面に比べ突っ込んだ話もできます。自分の顔が見えるので笑顔で話す練習にもなりました」

 男性は酔っ払っている人やたばこを吸っている人との対話は苦手だが、リモートなら気にならないという。

「まずはリモートの人間関係で社会的信用を取り戻し、来年あたりから本格的にビジネスを始動したいと考えています」

■効率的に情報収集可能

 別のグループで相席になった男性(50)は、大阪府内で複数の広告会社を経営。「自社の内部留保の投資先を探す」という明確な目的を持って参加している。今年1月以降、リモート交流会で知り合ったのがきっかけで事業に結びついたケースは4件あるという。リモートならではの情報収集術について男性はこう話した。

「今こうやって4人が画面に並んでいますが、4人でみっちり話せる機会ってゴルフぐらいしかないですよ。リモート交流会はゴルフに行くより、よっぽど効率的に情報収集できます」

 交流会ではビジネスのこみ入った話はしないが、親しくなればLINEでつながって後日、1対1でじっくり話ができる。

「独自のアイデアや技術でユニークな事業展開をしている人とも出会えます。そんなときは宝石を見つけたような感覚でワクワクしますね」

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