安倍前首相のアベノミクスでは、日本銀行と連携した「金融緩和」(第1の矢)、政府支出で仕事や所得を増やす「財政出動」(第2の矢)、企業などが活動しやすくする「成長戦略」(第3の矢)を打ち出した。

「参与と成長戦略会議のどちらの顔ぶれからも、トータルでは第2の矢を少し引っ込めて、第3の矢をさらに前に出している、というイメージを受けます」(藤井教授)

 参与でもう一人注目したいのは岡部信彦氏だ。新型コロナでは、政府の専門家会議やその後の分科会で対応にあたってきたが、徹底的なPCR検査の実施には抑制的な考えだったとされる。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう話す。

 「国立感染症研究所OBの岡部先生は、厚生労働省の“お抱え”と言える存在です。この人事は、菅首相には医療についてのブレーンがいないと告白しているのと同じです。コロナ対策が迷走を続ける可能性が大です」

 独自のブレーンがいないと考えているのは、政治評論家の有馬晴海さんも同じだ。

「主に政局で生きてきた菅首相が急にトップに立っても、政策を一緒に構築できる人がいません。だから安倍前首相から引き継いだりテレビに出ている人たちからつまんだりして、なんとなく後押ししてくれそうな人を置いているのだと思います」

 日本学術会議問題で波乱含みの船出となった新政権。官僚人事などでも強権的な一面をのぞかせる菅首相だが、ブレーンたちとの付き合い方も注目だ。

(編集部・小田健司)

AERA 2020年11月9日号より抜粋