清田隆之(きよた・たかゆき)/1980年生まれ。文筆業。これまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオで発信(写真:清田さん提供)
清田隆之(きよた・たかゆき)/1980年生まれ。文筆業。これまで1200人以上の恋バナを聞き集め、「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオで発信(写真:清田さん提供)

 恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表として、1200人以上の恋バナを聞き集めてきた清田隆之さん。これまで「恋愛とジェンダー」をテーマにコラムやラジオで発信してきたが、わが身を振り返ってその言動に後悔することもあるという。AERA 2020年11月2日号では、清田さんにジェンダーの問題について聞いた。

【アンケート結果】家庭や学校で感じるジェンダーのモヤモヤ

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――今年7月、ジェンダー・エッセー集『さよなら、俺たち』を刊行した清田隆之さん。

清田さん:僕はジェンダーを専門的に勉強したことがあるわけではありません。大学生の時に女友だちの恋バナや愚痴を男5、6人で聞いて、みんなで遊園地に行ったりするチャラチャラしたサークルをやっていたんです。ひどい彼氏の話とか聞いて、ちょっと元気になってくれたらいいなって。なぜか依頼が絶えなくて、続けるうちに溜(た)まったエピソードを桃山商事としてウェブやラジオで発信するようになりました。彼氏や夫、元カレやセフレ、合コンやアプリで出会った人など、男性たちの愚痴を無数に聞くわけですが、そこで見聞きする最低な振る舞いは自分にも重なる部分が正直あった。性格も生まれも違う男たちがなぜかそっくりな行動をとる。それはおそらく社会構造的なジェンダーという問題が背景にあって、そこからポコポコと量産されているものだろうと思い至りました。

――著書の中で清田さんは「見たくない自分」にとことん向き合い、さらけ出す。例えば、「先輩の家に遊びに行ったらいきなり抱きつかれて怖い思いをした」という女友だちを「なんでひとり暮らしの男の部屋に行ったりしたんだよ」と責めてしまった過去。

清田さん:後から、自分が言ってしまったセリフは、セカンドレイプと同種のものだったと気づいた。すごく後悔していますが、当時なんであんなこと言っちゃったのか、背景を言語化してみないことには、ちゃんと反省したことにはならないと思うんです。実際あのとき俺は彼女のことをほんのり好きだったよなとか、振り向いてくれないことにいらだっていたとか、いろんな気持ちがあったのをなるべく正直に書いて、そこにある構造や要因としてはこういうことだったんじゃないか、と考えました。

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