東海大硬式野球部員の大麻使用の疑いを受けた大学の会見。校内には薬物について啓発ポスターも貼られているという/10月17日、神奈川県平塚市 (c)朝日新聞社
東海大硬式野球部員の大麻使用の疑いを受けた大学の会見。校内には薬物について啓発ポスターも貼られているという/10月17日、神奈川県平塚市 (c)朝日新聞社

 東海大野球部、近畿大サッカー部などスポーツ強豪校で部員の大麻使用疑惑が相次いだ。背景にはいったい何があるのか。AERA2020年11月2日号では、スポーツエリートたちを取り巻く教育の根深い問題に迫った。

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 大学のスポーツ強豪校で、選手の大麻使用が相次いで発覚している。読売ジャイアンツの原辰徳監督ら多くのプロ選手が輩出した東海大学で10月17日、硬式野球部員数人が大麻とみられる薬物を使用した疑いがあることが発覚。21日には2人の使用を確認した。5日には、関西学生リーグ1部の近畿大学サッカー部が部員5人の大麻使用の疑いがあると発表。今年1月には、関東大学リーグ戦1部で昨季2位の日本大学ラグビー部の部員が大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕されている。

■スポーツ漬けで育つ

 大学スポーツのエリートたちが、なぜ薬物に溺れるのか。

 医療・スポーツ・健康に関する調査、研究等を行うGMSSヒューマンラボ代表で、医師でもある安藤裕一さん(59)は、「大学入学までの育ち方と、大学運動部の環境に問題があるのではないか」という。国際武道大学の非常勤講師を務めるなか、同僚や他校の体育系学部教員の間で話題になるのが、大学生の精神の低年齢化だ。

「ひらがなだらけのレポートを平気で提出する。中学生かと思うような学生が増えている」

 と安藤さん。核家族化、スマートフォンの出現もあって対面交流が少ないなど一般的な背景に加え、スポーツエリートは小学生時代からスポーツしかせずに育つケースが少なくない。

「(保護者やコーチから)勉強する時間があったら練習しなさい、大学にはスポーツで行けるからといった育て方をされた子どもは、スポーツ以外のことを経験して見聞を広げる機会とともに、自分で考え判断する余裕も奪われてしまう」(安藤さん)

 そのうえ、運動部は寮などで集団生活をする時間が長く、先輩後輩の縦社会の関係が形成されやすい。先輩に大麻を勧められると断ることができないという構図ができてしまう。

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