スカイマークは11年、日本の航空会社で初めてA380を6機発注した。だがその後の経営難から発注をキャンセルし、エアバスから巨額の違約金を求められていた。

 経営破綻したスカイマークにとってエアバスは、大口債権者の一つ。スカイマーク向けに製造中だった機体とANAが導入した機体は別物とされるが、スカイマークの経営再建を担ったANAと、債権者だったエアバスの間で何らかの交渉が行われ、ANAのA380導入につながったことは想像に難くない。

 いずれも急激な拡大路線のツケが、コロナ禍で噴出した形だ。

■「政権と蜜月」危機招く

 政権との蜜月関係を背景に膨張を続けた日航が破綻し、代わってナショナルフラッグ・キャリアへと躍進したANAが迎えた窮地。もちろん、ANAはなお高い自己資本比率を保っている上、すでに銀行団から1兆円超の資金調達のめどを付けるなど、破綻当時の日航とは状況が大きく異なる。だがそれでも、両社が苦境に陥る道筋は合わせ鏡のように符合する。

 13年の秋、ANAの経営陣は日航の破綻について筆者にこう語っていた。

「破綻は半分以上政府のせい。政府が航空行政に余計な手心を加えたりせず、自由な競争に任せていたらこんなことにはならなかったんだ」

 その言葉は今、ANAにもぴたりと当てはまる。政府が横紙破りで日航を救い、その埋め合わせとしてANAが有利になるよう競争環境をコントロールするというやり方が、コロナ禍の傷口を大きく広げている。(編集部・上栗崇)

AERA 2020年11月2日号