アメリカでもコロナで急増する需要に供給が追いついていないと言われていますが、それでもカウンセリングを受けるのに数カ月待ちということは私の知る限りありません。我が家があるのは人口20万人の中都市でアメリカの中では決して大きな街ではありませんが、車で10分以内の場所にカウンセリング・オフィスが11件見つかります。リモートでのカウンセリングも充実しています。カウンセラーは「カップル・カウンセリングに特化した人」「児童心理学の勉強もした人」「仕事のコンサルティングもできる人」などと専門分野が分かれており、目的に合った人へ依頼することができます。一度依頼した人がかかりつけとして固定されるので、継続的に会って信頼関係を築くことができます。

 そして何より、心理的なハードルが低いです。「カウンセリングに通っている」と言っても偏見の目で見られることは少ないですし、家族や友人に悩みを相談すると「カウンセリングに行ってみたら?」と気軽に勧められることもあります。我が家のように「全額保険で賄うので早めにカウンセリングを受けてください」と会社から受診を推奨されることもあるくらいです。

 コロナ禍でメンタルヘルスへの影響が出ているのは、日本も同じでしょう。日本でももっと気軽にカウンセリングが受けられるようになるといいのですが。カウンセラーの資格、医療保険との兼ね合い、精神科・心療内科との棲み分けなどさまざまな要素があるのでしょうが、まずは心理的な敷居が少しでも下がればいいのかもしれません。

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◯大井美紗子
おおい・みさこ/アメリカ在住ライター。1986年長野県生まれ。海外書き人クラブ会員。大阪大学文学部卒業後、出版社で育児書の編集者を務める。渡米を機に独立し、日経DUALやサライ.jp、ジュニアエラなどでアメリカの生活文化に関する記事を執筆している。2016年に第1子を日本で、19年に第2子をアメリカで出産。ツイッター:@misakohi

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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