「商品はコクのある上質な味わいながら、手ごろな価格で買える新ジャンル。ですから、長澤さんを男性が憧れるような旧来型のタイプではなく、新ジャンル好きの仲間として描きたいと思いました」

 竹野内さんと長澤さんでは、年齢的に先輩と後輩の関係になる。臼井さんが思い浮かべたのは手ごろな居酒屋で仲間で飲んでいるときの先輩と後輩の会話だ。「これ、うまいっすね」「だろ?」。先輩が「俺、○○食っていい?」と言うと後輩が「ダメっす」と返したり。やがて「どっちが先輩だ?」みたいになったり。「っす」を介して垣根がはずれ、楽しさと親密さが増していく。

「男女の垣根なく交わされている、こうした会話の感じを出したくて、長澤さんのセリフを『これっす』にしました。『これです』にしてしまうと、そこで会話が終わってしまうとも思いました」(臼井さん)

 文末に余韻とゆるさ、カジュアルさを加える「っす」は、便利な「言葉のスタンプ」なのだ。LINEやメールのスタンプ、絵文字と同様の働きをする。しかしSNSのスタンプなどと同じく、TPOをわきまえることも重要なようだ。「新入社員に用事を頼んだら『いいっすよ』と言われた」「40代にもなって『○○っす』を連発する職場の男性、どうなの」など否定的な声も聞こえる。便利な分、取り扱いには注意が必要っす。(編集部・石田かおる)

AERA 2020年10月26日号