コロナに関するところは、少し抑えた表情で。その後は明るい表情で。「皆さま」の手話は大きく手を動かすが、目線が指先を追っている。ダンスをするからこその優雅な手話。素人ながら、そんなふうに拝察した。

 大学時代から手話を学んだ紀子さま(54)の影響だろう、秋篠宮家は長女の眞子さま(28)も佳子さまも折に触れ、手話でのあいさつを披露している。この「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」は2014年に始まり、佳子さまは英国留学中を除いてすべて臨席してきたという。

 メッセージは約6分。「国際ガールズメッセ」よりも2分ほど長かった。14年からの積み重ねが自信となっているのだろう。

■「初めて」が似合う

 ちなみになのだが、新型コロナウイルスが拡大する中、お言葉をビデオメッセージで寄せた最初の皇族が佳子さまなのだそうだ。それを知ってちょっとうれしかったのは、佳子さまは「初めて」が似合うと勝手に思っているからだ。

 例えば学習院初等科2年生で始めたフィギュアスケート。大会にも出場、水色のコスチュームで滑る佳子さまの愛らしい様子がニュースで報じられた。皇室のイメージと違う新鮮さがあった。「文系」「伝統的」と思い込んでいたものが覆された。

 佳子さまに「初」が似合うのは、「長男」「長女」に比べ自由だからだと思う。例えば眞子さまは、生まれた時から「天皇陛下の初孫」という冠がついていた。それを意識してきたであろうことは、想像に難くない。となれば当然、「伝統」も強く意識したはずだ。その点、「次」の人なら、その度合いが低くてすむのではないだろうか。

 天皇陛下(60)と秋篠宮さま(54)の関係もそうだ。昭和の終わり、大学生の秋篠宮さまは口ひげをはやしていた。1987年3月、そのことを朝日新聞が写真と共に報じた。見出しは「礼宮さまの“挑戦”」。兄の浩宮さま(当時)には決してできない挑戦であり、だからこそ記事にもなったのだろう。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2020年10月26日号より抜粋

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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