大島:まさにそうですね。ちなみに、タイトルはなぜ「生き“ちゃった”」なんですか?

石井:「愛」をテーマに考えたとき「死」と「生」が思い浮かんだんです。愛することは強烈に生きることで、つまりは皮肉なほど死に近づいていく。死というものの重みが感じづらい現代だからこそ、「生きる」という能動的な言葉がしっくりこなくて。「ちゃった」くらいの滑稽さのほうが腑に落ちる。

大島:いま本当に生と死は隣り合わせになっている。いま生きていることも「もしかして、なんか……生きちゃってる?」みたいな感覚、よくわかります。

石井:今回、大島さんをはじめ(仲野)太賀君、若葉(竜也)君に異常なほどの迫力と熱気があった。なぜそこまで本気でさらけだそうとしてくれたの?

大島:「なにくそ!」っていう人たちが集まったのかもしれないですね。自分の置かれている状況や社会、愛に対してなど対象はそれぞれだと思うんですけど。

石井:なるほど。

大島:そういう怒りや思いはパワーになる。全員がそこで響き合っていたから自分が生半可でやるとそこから落ちてしまう、という気持ちでした。でも公開されてみないと、このチャレンジが成功か失敗かはわからないですよね(笑)。

石井:いや、大丈夫でしょう!(笑)

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2020年10月12日号