マスクを着けていると口には触れないので、その面からもマスクは効用がある。一方で見落としがちなのが「目」だと田辺さんは言う。その点、眼鏡は飛沫・接触感染の有効な防御手段になる。抵抗がなければ、ゴーグルやフェイスシールドの着用をおすすめしたい。

 空気感染のリスクをめぐっては、医学的見解がわかれており判断は難しいが、田辺さんはリスクあり、と唱える立場だ。

「電車内でマスクをしていても、5マイクロメートル以下の飛沫の粒子は半分防ぐことができればいいほうで、残りは空中に漂っています。それを吸うと感染するというのが空気感染です」

 密閉空間で空気感染を防ぐカギとなるのが換気だ。

「厚生労働省は空気感染のリスクを明言していませんが、早い段階で『換気が重要』と発信してきました。これは空気感染のリスクを指摘していたのと同じです。飛沫感染や接触感染と換気は無関係だからです」

 どの程度の換気で空気感染を防げるのかはわかっていないが、電車やバスの窓は一定間隔で開けたままにし、適度に換気することで感染リスクは減る、と田辺さんは強調する。

■車や自転車のレンタル

 NRIの調査では、今後、新型コロナの感染が収束して不安を感じなくなった場合も含め、普段の通勤・通学や買い物に出かける際に利用したい移動手段は、やや利用したい人も含めると「所有する乗り物」とする人が8割前後の高い割合を示した。

 感染不安を感じるときに鉄道を利用したいという人は、感染不安を感じないときと比べて57%から22%に減少、バスも45%から14%へ減少する。一定期間借りられる月額定額制などのレンタル制度の利用意向は「車」「自転車」ともに30%で、鉄道やバスを抜いた。自転車を利用したい人の割合は関東や近畿で高い傾向が出ている。

「日常の移動手段は『所有する乗り物』や『一定期間専有できるレンタル方式』なども活用し、できるだけ感染リスクを下げようとする意識が垣間見られます」(佐野さん)

 近場の個室スペース(窓有り)で仕事をすることへの関心度は、利用料が会社負担の場合、44~50%と高かった。在宅勤務の課題である「メリハリの欠如」や「専用スペースの欠如」「家族の存在による集中しにくい環境」の解消が理由、と佐野さんは見る。

「例えば、鉄道会社が近場での働き方支援として、ターミナル駅や準ターミナル駅でない駅についても遊休地を活用しながら、初期費用とランニングコストを抑えた個室スペースを提供し、企業がリモートワーク支援の一環として利用することも考えられます」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年10月12日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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