■路頭に迷わないように

 九州の短大を出て、就職で上京。羽田空港の保安検査員やウェブ通販のベンチャー企業の立ち上げなどを経験後、労務関係の専門学校で学び直した。だが卒業が東日本大震災と重なり、混乱の中で正社員の仕事は見つからず。以降、同じ業界で人事の仕事を非正規で続けてきた。

 昨年10月、正社員への登用を前提に外資系メーカーに採用された。だが、状況が変わった。週5日の在宅勤務で給料も減らなかったが、周囲を見ていると「自分にはどんな形で影響が出るか」と心配していた。

 8月末に雇い止めを告げられた。「誰が悪いわけでもない」とは思うが、忸怩たる思いもある。就職先を探そうにも、学歴や、非正規でしか人事の仕事の経験がないことがネックだ。蓄えもない。実家にも今の状況は伝えていない。女性はつぶやいた。

「とにかく路頭に迷わないようにしなければ……」

(編集部・小田健司)

AERA 2020年10月12日号より抜粋