オンライン授業の裏には、その準備に費やされる教員の膨大な努力と時間がある (c)朝日新聞社
オンライン授業の裏には、その準備に費やされる教員の膨大な努力と時間がある (c)朝日新聞社
AERA 9月28日号より
AERA 9月28日号より

 今年、一気に広がったオンライン授業。3月から2カ月半の休校中に、小中高大の各学校だけでなく塾でも唐突にスタートした。あれから半年。親と教師の悪戦苦闘は続き、疲労の度合いは増している。AERA 2020年9月28日号では、オンライン授業に苦戦する教師らを取材した。

【オンライン授業】教員から見た課題とは?

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「1週間確保できたはずの夏休みが、オンライン授業の準備のために、実質仕事になりました」

 東京都で教員をしている女性(30)は、ため息をついた。勤務先の公立小学校では、休校中から、タブレットの使用法やオンライン学習支援サービス「eライブラリ」について研修が行われている。eライブラリは双方向性で、ドリルなど課題を出したり進捗を確認したりできるほか、児童がメールで質問もできる。この夏休み、試みとして、eライブラリで宿題を出した。

 すると、「子どもからメールが来ている。個別に進捗確認と連絡をするように」と、お盆中に管理職から指示があった。

 休み前から、コロナ禍での勤務状況は過酷だった。休憩なしで1日7時間の授業をこなし、放課後は消毒作業を行い、仕事を終えるのは午後9時過ぎ。睡眠時間は不足がちで、体力的にもうギリギリだ。

「次に休校したら、Zoomによるオンライン授業をすぐにやると言われています。これ以上、仕事が増えるのは地獄です」

 8月、SNSで「#先生死ぬかも」がトレンド入りし、教員らが窮状を投稿した。AERAがアンケートを行ったところ、「感染予防対策に時間をとられる」「学習の遅れを取り戻すため授業時間が増えた」などに加え、「オンライン授業の準備が大変」という声が特に目立った。

 神奈川県の私立小学校に勤務する女性(45)は、5月の連休明けから約1カ月間、週に2、3回、1本10分程度の授業動画をオンラインで配信していた。

「45分の授業の要点を10分にまとめ、パワーポイントでスライドを作り、解説を録音する。校長がチェックして修正があれば撮り直します。学校に撮影に行くこともあり、動画1本作るのに丸1日かかっていました」

 女性はオンライン授業にならぬよう、「祈るばかり」だという。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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