AERA 2020年9月28日号より
AERA 2020年9月28日号より

 米アップルと世界的人気ゲーム「フォートナイト」で知られるエピックが対立している。アップルがアプリ提供者に課す手数料率が高すぎるとエピックが声をあげたことが発端だが、実はエピックは壮大な構想をもって戦いを挑んでいるという。AERA 2020年9月28日号の記事を紹介する。

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 世界的なスマートフォンメーカーにしてIT業界の巨人と呼ばれる米アップルと、スマホや各種ゲーム機で楽しめ利用者数が全世界で3億5千万とされる超人気ゲーム「フォートナイト」で知られる米エピックゲームズが激しく対立し、スマホやゲームの業界にとどまらない注目が集まっている。

 対立の直接的な原因となったのは、ゲームを含むアプリ提供者にアップルが課す手数料率の高さだ。エピックはより料率の低いゲームストアを展開し、アップル支配からの解放を呼びかけている。プラットフォーマーに反旗を翻す参加企業という構図は1980年代以降、家庭用ゲーム機で圧倒的なシェアを握る任天堂にハドソン、セガ、SNKといったゲームメーカーが独自のゲーム機で挑み、敗れ去ってきた姿にも重なる。

 では、今回の勝敗も──。そう考えるのは早計だ。一般的にはフォートナイトのメーカーとしての知名度がせいぜいと言っていいエピックは、実は、プラットフォーム参加企業の域をはるかに越えた実力と壮大な構想を抱えて、アップルとの戦いに挑んでいるのだ。

■GAFA支配への挑戦

 アップルはエピックを「ロビンフッドを装う大金持ち」と警戒し、「アップル支配からの解放者」という主張に疑義を呈する。アップルが恐れるのは、エピックのもくろみが成功し、巨大プラットフォーマー「G(グーグル)A(アップル)F(フェイスブック)A(アマゾン)」が牛耳るITの世界ががらりと姿を変えることだ。

「2020年を『1984』にしないための世界に参加してください」

 エピックはアップルとの対立が始まった直後に、こうしたメッセージをフォートナイトプレーヤーに呼びかける動画をユーチューブなどに掲載した。

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