アプリでマッチングした後は、直接会ってデート、が「定番」だった。しかし、そこにも変化の波は押し寄せた。直接会う前に、ビデオ通話機能を使って「デート」するのだ。マッチングアプリ経由でオンラインデートを経験した女性(32)はこう話す。

「これまでは、会って問題ない人かメッセージのやり取りを重ねて慎重に判断していました。疲れるし、いい人を逃していたかもしれない。でも、オンラインならとりあえず会ってみようと気軽に構えられます。どうしてもイヤなら接続不良のふりをして消えることもできるし」

 アプリの効率を歓迎する一方で、寂しさも感じている。

「今までで一番長く付き合った相手はバーでたまたま会った人。偶然が重なって思いもよらない人と親しくなるのはおもしろい。アプリや婚活サービスだとプロフィルで選ぶので、同じタイプの男性ばかりになる」(女性)

 リクルートブライダル総研の「婚活実態調査2020」によると、去年結婚した人のうち、マッチングアプリなどネット系婚活サービスを通して結婚したのは6.3%。新婚カップルの15組に1組だ。その割合はさらに高まると予想される。ブライダル総研の落合歩所長は言う。

「ネット系婚活サービスは目的が明確で、効率がよく煩わしさがない。今の若者の合理的な思考にマッチしています。大企業も参入しており、悪いイメージもかなり払拭されました。コロナ禍でメリットに気づく人も増え、さらに伸びると思います」

 従来型の結婚相談所も、オンライン化を進めている。千葉県の「ユカリリトルハート」では、3月からビデオ通話を使った「オンラインお見合い」を始めた。運営者の唐仁原景子さんは圧倒的にメリットが多いと話す。

「最初の出会いのハードルがグッと下がりました。リアルのお見合いでは、身なりを整えて時間をかけて出かけても、会ってみたら“まったく合わない”ことも少なくなかった。最初をオンラインにすることでこの労力が解消されました。いいなと思えばリアルで会えばいいし、ダメでもダメージが小さいんです」

 唐仁原さんは、お見合いの成功のカギは「いかに多くの人と会うか」だと言い切る。最初のお見合いをオンライン化することで会える人数が格段に増えるという。緊急事態宣言が明け、結婚相談所業界全体でみると以前のようなリアルなお見合いに戻りつつあるが、いまも会員にはオンラインを勧めている。(編集部・川口穣)

AERA 2020年9月28日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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