イチから新たな相手を探すのは難しそう。別れを躊躇していると、突然彼氏から一緒に住もうと誘われた。理由を聞けば、「外出自粛で孤独を感じてパートナーの大切さが身に染みた」という。「何を勝手な」とも思ったが、もともと一緒にいるのが心地いい相手ではあった。「結婚前提なら」と同棲をOKし、緊急事態宣言解除後に家を借りた。その後、久しぶりに出かけたレストランで指輪を渡され、婚約。9月末に婚姻届を出す予定だ。結婚する気があるのかないのかわからなかった彼氏が、コロナ禍以降急に積極的になった。

「結婚したい側だった私が戸惑うほど。彼が結婚を決めたのは、ある意味コロナのおかげです」

 一方で、変わらないこともある。川名教授は言う。

「誰かと一緒にいたいと思うのは自然なことで、コロナ禍にあってもそれは変わりません」

 人を愛するという営み、誰かとつながりたいという欲求は変わらずに続いていく。(編集部・川口穣)

AERA 2020年9月28日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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