イラスト:小迎裕美子
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 コロナ禍に人々の「恋愛欲」や「結婚熱」が高まっている。新型コロナの感染拡大を機に結婚に至った女性もいる。AERA 2020年9月28日号から。

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 出会いの場がオンラインに移り、変化を余儀なくされているようでいて、実はコロナ禍を通じ、「恋愛欲」や「結婚熱」が高まった人は多いという。立正大学の川名好裕教授(恋愛心理学)は、人間が持つ生物としての本能が恋愛や結婚への欲求を高めたと指摘する。

「人間は不安を感じたり生命の危機が迫ったりすると無意識にパートナーを求め、子孫を残したいと感じるようになる。特定の相手がいない人はそれを求めるようになるし、パートナーがいる人も結婚など、より深いつながりを持とうと考えるのは自然なことです」

 心理学の世界では「ロミオとジュリエット効果」と呼ばれる心理現象が知られている。恋愛は壁があるほど燃え上がりやすい。コロナ禍は、いわば社会的な障壁だ。その障壁を乗り越え、新たな一歩を踏み出す人もいる。

 実際、「婚活実態調査2020」によると、「恋人がほしい」「いずれは結婚したい」と考えていた人の約4割が、新型コロナの感染拡大を受けてその意向をさらに強めたという。ブライダル総研の落合歩所長はこう分析する。

「自粛期間中に人と過ごすことのありがたみを実感したり、将来を考える機会となった人が多かったのだと思います」

 人材派遣会社に勤める30代の女性は、約6年交際した彼氏とまもなく結婚する。付き合い始めてからずっと、ふたりとも首都圏でひとり暮らしだった。付き合いが1年を超えたころ、「家賃が節約できるから」と同棲を持ちかけたこともある。しかし、「まだひとりがいい」と拒否された。30歳が近づき、過ぎ去っていくと結婚への焦りも生まれた。何度か水を向けたが、のらりくらりとかわされた。

 もう、別れよう。何度もそう思い、3月には本気で決意した。子どもを望むなら、あまり猶予はない。真剣に将来を考えられる相手を探さなくては──。婚活サービスについて調べ、別れを切り出そうとした矢先に新型コロナウイルスの感染拡大が始まった。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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