■熱狂的な支持者を意識

 RCPによると、前回大統領選があった16年8月中旬では、ヒラリー・クリントン民主党候補(当時)の支持率が41%、トランプ共和党候補(同)が35%だった。

「クリントン氏が夏にリードしていた後、何が起きたかは誰もが知っている。バイデン支持者は、彼のリードが盤石なのかどうか心配してもおかしくない」(RCP)

 9月上旬までの選挙戦で、テレビやソーシャルメディアで目立っているのは、圧倒的にトランプ氏だ。トランプ氏は、薬価引き下げの大統領令を出すために製薬会社の関係者と会合したり、米国人の雇用を取り戻すとして、中国との経済で「デカップリング(切り離し)」を表明したりした。日々、熱狂的な支持者を意識した政策を発表してアピールするトランプ氏に対し、批判を繰り返すばかりのバイデン氏の影はこのところ薄い。しかも、トランプ支持者の「熱意」は、4年前も事前の支持率には反映されなかった。

 9月29日には、第1回大統領候補テレビ討論会があり、両候補が初めて生で対決するのを有権者が見守る。16年にも3回あった討論会直後の勝敗について、視聴者は3回ともクリントン氏に軍配を上げていた。

 バイデン氏は支持率で差をつけているものの、こうした状況では、米有権者が「バイデン氏はどう逃げ切るのか」という点に注目してもおかしくはない。「いつか来た道」として思い出される2016年の記憶は、特に民主党支持者の心理に大きく影を落としている。(ジャーナリスト・津山恵子=ニューヨーク)

AERA 2020年9月21日号