■天皇家に育つとは

 それは陛下と雅子さまの意思表示なのだと思う。上皇さま美智子さまから受け継いだ戦争への視点、平和への思いを、愛子さま、そして未来につなげていく、それが「今後とも」。皇室とは、そういうものなのか、と納得した。

 3年前、愛子さまの作文を読んだ時、なんとしっかりした文章だと驚いた。愛子さまの並外れた優秀さを実感した。しかし、中満さんをきっかけに読み返し、それは単なる「成績優秀」などをはるかに超えたものだと感じた。天皇家に育つとはこういうことか、と思った。

 今号のアエラが発売される14日、自民党の新総裁が決まるはずだ。コアな支持層である保守派の方を向き、女性・女系天皇論を徹底的に避けてきた安倍晋三首相だが、次の首相はどう向き合うのだろう。「女系天皇を含め、検討が必要」と指摘した河野太郎さんは早々に総裁選への立候補を断念した。

 河野さんの視点は第1に、「男子出産のプレッシャーを受けた雅子さまと紀子さまを見て、皇室に嫁ぐ人がいるのか」にあるようだった。もちろんそれも大きな問題だ。だが、中満さんを通して見えてきた「平和」へのバトンからわかるのは、受け継ぐ人を性別で分ける理由は全くない、ということだと思う。

 愛子さまの作文には、こんな一節がある。「日常の生活の一つひとつ、他の人からの親切一つひとつに感謝し、他の人を思いやるところから『平和』は始まるのではないだろうか」

 愛子さまは今日も、日常を陛下と雅子さまと共に過ごしている。男子か女子かは関係ない。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2020年9月21日号

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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