池上:それでいうと、菅さんは好きな作家をイタリアの政治思想家のマキャベリ(※)って言ったんです。平然と言うっていうのは、すごいよなと思って。

佐藤:読んでますかね。

池上:いやあ。読んでるのかどうかわからないけど、マキャベリに憧れているってことは明らかですね。

佐藤:マキャベリの『君主論』っていうと、実際にテキストをひもといてみると非常に文脈が込み入った難しい本ですからね。中世と近代の過渡的なところにあるんで、相当注意して読まないと、意味がよくわからないんです。

池上:本当のところは、マキャベリそのものを読んでいるのかはわからない。マキャベリを解説する通俗本とか、マキャベリを学べとか、そっちのほうなのかもしれないですけどね。

■若手を競わせて次世代を作る

──菅政権に望むことはなんですか。

池上:菅さんには望んでも無駄なんで私が望むことはないですから(笑)。白々しいですよ。

佐藤:菅内閣っていうのは、やはり過渡期の政治家たちによるシステムですよ。わずか菅政権に望むのは、まともに政治を動かすために、きちんと下の世代の政治家を競わせて、人材をとにかく競わせることです。

池上:その点でいえば、それはおっしゃるとおりだと思います。彼が本当に日本のことを考えているのであれば、若手を競争させることによって、自力で這い上がってくる、そういう政治家をどれだけ作り出していくかっていうことをやらなきゃいけないと思います。

佐藤:派閥のしがらみがない無派閥ということを菅さんは謳っているけれど、この総裁選を見ていても、派閥の影響を受けないなんてことはできないでしょう。

 今の官邸官僚には、国民の信頼を失うような問題を抱えている方がいます。こういう官僚は、権力の中心から少し距離を置いてもらったほうがいいと思うんですね。

 それから、二階(俊博)さんと麻生(太郎)さん。このお二人は、日本のために十分に貢献していただいたから、この辺りで「もう十分です。ありがとうございます。あとは我々でやります」ということをきちんと伝えることは、菅総理しかできないですから。これがもしできたらこの政権の最大の功績になるでしょうね。

(構成/編集部・三島恵美子)

※著書に『君主論』。どんな手段でも、結果として国家の利益を増進させるなら許されるとするマキャベリズムを説いた

AERA 2020年9月21日号より抜粋