■虫歯と同様予防が大切

 まずは大胸筋だ。壁に向かって立ち、手のひらを上に向けた状態で右腕を真横に伸ばし、小指を壁に付ける。左手を肩の高さで壁に押しつけ、全身を左にひねると胸の筋肉がギューッと引っ張られているのがわかる。10秒。そこから顔を上に向け、また10秒。さらに体を左にねじり、10秒。逆も同様に。

 次は前腕の屈筋だ。腕をまっすぐ前に伸ばし、指先が地面を向くようにして壁に右手のひらをつける。そのままぐーっと体を左にひねって10秒。腕の筋肉が伸びているのがわかる。顔を上に向けて10秒。左に向けて10秒、そして逆も。

 いよいよ辞書……いや、広背筋。やはり壁に向かい、右手をまっすぐ上げたら、チョップするように小指を壁に押し当てる。おしりを後ろに出すようにして体を前に傾け、10秒。顔を左に向け、さらにおしりを突き出して10秒。今度は顔を右に向け、10秒。逆も。脇腹が伸びていく。

「これまでの悪い蓄積が残っていますので、まずは三つの筋肉をしっかり緩めましょう。その後はパソコンを使ったり文字を書いたりという肩甲骨が前に出るような動きをした後に、必ずストレッチをして筋肉を緩めれば大丈夫。虫歯にならないよう、ものを食べたら歯を磨くのと同じことです」

 取材後、ストレッチを1日3回、3日間続け、キャスター・ひじ掛け付きの椅子とパソコンの画面を高くするスタンドを買い、この原稿を書き始めた。もちろん、30分おきに一休みし、紹介したエクササイズをあれこれ試しながら。ほぼ書き終えた深夜2時、肩こりは感じていない。肩こりは根治できる。そう確信できた。(編集部・上栗崇)

AERA 2020年9月21日号より抜粋