筆者の肩の皮膚を、脂肪ごとぐいっとつかむ成田さん。もむのではなく「ふるふる」とゆすることで筋肉と脂肪の間にあるファシアのすべりをよくしている 
筆者の肩の皮膚を、脂肪ごとぐいっとつかむ成田さん。もむのではなく「ふるふる」とゆすることで筋肉と脂肪の間にあるファシアのすべりをよくしている 
両肩を耳にギューッと引きつけた後、脱力。ところが「全然力が抜けてません」と成田さん。力を抜くのも練習が必要だ
両肩を耳にギューッと引きつけた後、脱力。ところが「全然力が抜けてません」と成田さん。力を抜くのも練習が必要だ
成田崇矢(なりた・たかや)/桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部スポーツテクノロジー学科教授。リオ五輪飛び込み競技日本代表トレーナー(撮影/写真部・掛祥葉子)
成田崇矢(なりた・たかや)/桐蔭横浜大学スポーツ健康政策学部スポーツテクノロジー学科教授。リオ五輪飛び込み競技日本代表トレーナー(撮影/写真部・掛祥葉子)

 最新の研究結果も、エクササイズも、本当に効かなければなんの意味もない。AERA 2020年9月21日号で、長年肩こりに苦しんできたAERA副編集長(45)が、体を張って試してみた。

【写真】両肩を耳にギューッと引きつけた後、脱力

*  *  *

 肩こりの大きな原因は、皮下脂肪と筋肉の間にあるファシア(筋膜)。最新知見を身をもって体験するため、桐蔭横浜大学教授の成田崇矢さん(45)を訪ねた。

■「ふるふる」数分で劇的

「論より証拠。まずやってみましょう」

 成田さんは筆者(45)を研究室のベッドに座らせた。筆者はアエラ副編集長。新聞記者になった20代前半から肩こりに悩み続け、マッサージに行っては「1時間ぐらいじゃとてもほぐしきれません」と匙を投げられてきた、筋金入りのバキバキ肩の持ち主だ。

「これから、筋肉と脂肪の間のすべりをなめらかにします。では肩の脂肪をつまみますね」

 成田さんは筆者の左肩の皮膚を、両手で脂肪ごとぐいっとつかみ、そのままふるふると軽く揺すり始めた。時間はほんの十数秒。続いて、少し離れた場所の皮膚をつまみ、またふるふる、ふるふる。一般的な肩こりのマッサージとは全く違う。筋肉に力を加えず、皮膚と脂肪を揺すっているだけだ。

「どうですか?」

 2分ほどして不意にそう聞かれ、肩を動かしてみる。

「え、ウソでしょ……?」

 まるで30分以上もマッサージを受けたように、今「ふるふる」された左肩の上部が軽い。続けて、まだ突っ張った感じが残る肩甲骨のあたりも「ふるふる」してもらった。合わせてほんの数分。左肩が笑ってしまうほど軽くなり、逆に何もしていない右肩が泣きたいぐらい重く感じる。なんだなんだこれは。

「特別なことをしているわけではありません。筋肉そのものの状態が変わらなくても、筋肉と脂肪の間のすべりがよくなるだけで脳は『楽になった』と認知するんです」(成田さん)

 確かに、左肩を触ってみると筋肉はパンパンに張ったまま。狐につままれたような気分の筆者に、成田さんはこう続けた。

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