新型コロナの補助金から対象外になった性風俗業者。国の支援が得られないことで、納税意識の低下をつながりかねない。AERA 2020年9月14日号は当事者の本音を聞いた。
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風俗業で働く人向けの法律相談事業「風テラス」を手がける「一般社団法人ホワイトハンズ」(新潟市)の坂爪真吾代表は、新型コロナウイルスの補助金で性風俗業者は対象外という処遇が合法的に性風俗事業を行う人たちの納税意識へどう影響するかも心配している。
「国の支援が届かないとなると、払う必要がないと思ってしまわないでしょうか」
当事者たちはどう考えているのか。
「納税の義務を果たしているのに受け取る権利を与えられないのはおかしい」
東京都町田市を拠点に「リフレ」と呼ばれる派遣型の風俗店を経営する男性(33)は、どこまでも冷静な目で見ていた。
IT企業勤務や飲食店の経営を経て男性が性風俗の世界に入ったのは昨年7月。あるオンラインサロンを通じて「リフレ」を知り、あくまでビジネスとして始めた。学生を中心に18~23歳の女性15人ほどを抱え、開業1年足らずで「1軒もリフレがなかったエリアで定着しました」(男性)。
多くの風俗店が営業を続けた緊急事態宣言下で、この男性が店を1日も営業しなかったのは、異例だったかもしれない。業界全体がコロナの影響を受ける中で、男性が今感じるのは、政治や行政の対応のつたなさだという。
「法の下の平等はどこにいったのか、という理不尽さはあります。ただ、それ以上に『もっとうまくやれないのかな』という気持ちです。納税していない事業者もいると思いますが、こういう時にこそきちんと支援の対象にすることで、正しく税を納めてもらう道筋をつけた方がいいに決まっているでしょう」
男性は、給付対象外となったことで納税の意欲が低下するのは、「自然な気持ち」だと理解するが、実際に自身がそうするかというと話は別だ。
「リスクを抱えるだけだから」
だが、全ての人が同様に考えるとは限らない。裁判で国側が示す姿勢に注目したい。(編集部・小田健司、川口穣)
※AERA 2020年9月14日号より抜粋