岩田健太郎「世界を知らない」という自覚が感染症のプロを生んだ<現代の肖像> (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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岩田健太郎「世界を知らない」という自覚が感染症のプロを生んだ<現代の肖像>

木村元彦AERA
忖度だらけの国の中で、厚労省データや学会のガイドラインもおかしければ真っ向から批判する(撮影/植田真紗美)

忖度だらけの国の中で、厚労省データや学会のガイドラインもおかしければ真っ向から批判する(撮影/植田真紗美)

いつも正攻法ゆえにアドバイスも受ける。「厚労省なら、この人で、この根回しだろ、とか。でも僕はボタン押しの順番を知っている、みたいなことには興味がないし、得意でもないんです」(撮影/植田真紗美)

いつも正攻法ゆえにアドバイスも受ける。「厚労省なら、この人で、この根回しだろ、とか。でも僕はボタン押しの順番を知っている、みたいなことには興味がないし、得意でもないんです」(撮影/植田真紗美)

 岩田の、どんなところが抜きん出ていたのか。
「英語のレベルが高くて他言語の文献からも情報を得て物事の本質を考えていた。医学は本来、美術や哲学、自然科学などすべての基礎学問の土台の上に存在するものですが、日本では偏差値重視で医学に入ってしまうので、その大事な分野が薄いまま医者になる人が多い。そんな中で彼は、必要なリベラルアーツがしっかりとあったわけです」
 特に感染症は……、と吉川は続ける。

「特に感染症は、人の生活にものすごく関わります。生き死にはもちろん、家族や社会とのつながりに大きな変化をもたらす。生活すべてに関わるわけで、芯がある岩田さんがその道に進んだことは大きいと思います」

 感染症のプロは、世の中の様々な価値観を念頭に置いてその中で感染症を考えないといけないというのが、岩田の持論である。ジャズのプロはクラシックとの違い、あるいは絵画などとの類似を語れる。感染症のプロもコロナ対策と経済も両方考えて、社会の中でコロナの問題を相対視できないとダメなのだと言い続ける。

 だから、岩田の関心領域は今でも多ジャンルに及ぶ。デスクには、常に読みかけの本が積まれているが、2020年8月のそれは、ウディ・アレンの評伝、ルソーの哲学書、日本の古典小説、数学の専門書など6冊、これらを同時並行で読んでいく。時間が空くと、語学学習に余念なく、これも6カ国語を1・5倍速で耳に入れる。日課にしているジョギングも必ず、好きな春風亭一之輔の落語を聞きながら走るのだ。

 しかし、一秒も時間を無駄にしない日常についてストイックと他者から修飾されると首を振る。

「僕は自尊心が低いからなんです。田舎育ちで世界を知らないという自覚があるんです。だからそれを知りたいという欲望に転化する。調べれば調べるほど、分からなくなるからまた学ぶんです」
(文/木村元彦)

※記事の続きは「AERA 2020年9月7日号」でご覧いただけます。


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