──八大タイトルの勢力図について、渡辺名人から見た他の戴冠者の特徴はどうでしょう。

 藤井さんは終盤力がすごいけど、他の人たちは僕も含めてそれほど個性はありません。指す戦型はそれぞれ決まっているのでオールラウンダーではないんですが。要するにAIを用いて研究をする、そして中終盤はある程度高い精度で指すことが今活躍するために求められる条件なので、そこはみな共通項になっています。

──藤井二冠と対戦していて、他の棋士には感じないような感覚を覚えることはありますか。

 ありますね。終盤の読みの速さが違います。大人も交じった詰将棋の大会に12歳で優勝しちゃうような人なんで。普通考えられないです。そんなことができちゃうので、もともと読みのスピードが違うんですね。

──中学生で棋士になったのはこれまで加藤一二三九段(80)、谷川浩司九段(58)、羽生善治九段(49)、そして渡辺名人と藤井二冠の5人だけ。以前、藤井二冠とは全盛期同士での対局は少ないのでは、とおっしゃっていました。

 18歳離れていますからね。僕と羽生さんは14歳差なので、それと比べたら戦う回数は減るだろうという感覚はありました。でも、デビューしていきなり29連勝したのでその時点で高校卒業までにタイトルを取るだろうというのが大方の見解でした。わずかに停滞してタイトル戦にはまだ絡まないかなという時期がほんの一瞬ありましたけど、この1年で一気にきましたね。

(構成/編集部・大平誠)

AERA 2020年9月7日号より抜粋