バイデン前副大統領の応援演説に立つカマラ・ハリス上院議員/2020年3月9日、米ミシガン州デトロイトで (c)朝日新聞社
バイデン前副大統領の応援演説に立つカマラ・ハリス上院議員/2020年3月9日、米ミシガン州デトロイトで (c)朝日新聞社

 カマラ・ハリス上院議員(55)が民主党の副大統領候補に決まった。民主党大統領候補のジョー・バイデン氏(77)が勝利すれば、副大統領として初の女性、初の黒人、母親がインド出身であるため初のアジア系となる。多様な背景を持つハリス氏の存在はバイデン氏の大きな後押しとなりそうだ。他方、大統領選については懸念事項もある。AERA 2020年8月31日号の記事を紹介する。

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 ニューヨークのジャパン・ソサエティー理事長であり政治学者のジョシュア・ウォーカー氏は、ハリス氏の抜擢(ばってき)は「副大統領候補選びで、米国の歴史上、最も重要」と指摘した。

 白人男性で高齢、中道派のバイデン氏と、これほどぴったり補完し合える人選はない。

「ハリス氏は、人種・移民問題を自分の言葉で語れる、民主党の支持基盤の“将来”を担う」(ウォーカー氏)

 民主党が今後支持基盤として固めていきたいものの、投票率が伸び悩んでいた非白人と若者層という有権者の心を、ハリス氏はつかむことができるとみられている。

 また、ハリス氏はキリスト教のバプテスト派信者だが、インド生まれの母親はヒンドゥー教徒、夫で弁護士のダグラス・エムホフ氏はユダヤ人と、宗教的に幅広い支持を得られる。過去にキリスト教信者の支持者に偏っていた選挙戦に、新たな要素を加えそうだ。

 米議会で最高齢の女性黒人下院議員であるマキシン・ウォーターズ氏(民主党)は8月20日、MSNBCに出演し、語った。

「女性であり黒人の抜擢は、人びとに勇気を与える良い刺激。この国の政府が、(人種や性別を超えて)門戸を開いていることを、私たちに見せてくれた」

 ハリス氏は8月19日、党大会で副大統領候補の任を受諾する演説を行った。今年の選挙は「打倒トランプ」の大統領選として、前代未聞の重要性を強調し、こう締めくくった。

「この選挙は、この国の方向性を変える」
「将来、私たちの子供たちが『あの時、どこにいたの』『何をしたの』と尋ねるだろう。その時に、私たちが、何を、したのか、伝えるのです」

 前出のウォーターズ氏は、ハリス氏の演説についてこう指摘した。

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