「早めに合格したいからとAOを希望しがちですが、本命校が他にある生徒にはすすめていません。受かったら気が緩むし、ダメだったときは立て直すのに時間とエネルギーを費やします。マイナス面も大きいんです」(河野部長)

■高3から「礼法」の学び

 勉強一辺倒ではない。頌栄女子学院では、立ち居振る舞いや礼儀、服装などを学ぶ週1日の「礼法」が高3時にスタートする。受験生の貴重な1時間に、なぜ礼法なのか。

「社会に出ていくわけですから、勉強だけできればいいわけではありません」(同)

 渋谷教育学園渋谷しかり頌栄女子学院しかり、点数や偏差値至上主義にならない教育が、現役進学力を高める「共通項」といえる。都内の中高一貫校の男性教師は、中学受験のいまの現状をこう打ち明ける。

「成績はもちろん大切ですが、行き過ぎた偏差値至上主義は答案の改ざんや課題の剽窃(ひょうせつ)といった不正にもつながります。低学年のうちにしっかりフォローするのも教師の役目です」

 中高6年間というスパンでの教育がやはり強みになるという。

 ランキングでは各大学の付属校は除いているが、関西学院大や立命館大など特定の大学への進学コースを設置している帝塚山学院や平安女学院など一部の高校は、現役進学率が高くなっている。だが、その点を踏まえても、志望する大学に「強い高校」の傾向がつかめる。

■川和と小金井北の強み

 なお、大学への現役進学率は全国平均で54.7%。都道府県別に見ると1位は京都の65.9%で、東京(65.1%)をしのいで4年連続の全国トップだ。ほかにも兵庫、広島、大阪、奈良、福井、滋賀など、近畿以西の地域も高い。

 今年、MARCHへののべ合格者数で全国トップをたたき出した神奈川県の川和は、現役進学率でも、早稲田大に35人(11%)、明治大に36人(11.3%)の生徒が進んでいる。高い実績の背景について、前出の武川さんは「都立高校に対する焦りがある」と指摘し、こう続ける。

「一時期低迷した都立高校が立て直したのを受け、神奈川も進路指導に力を入れ始めた印象です。高校受験で川和にギリギリで受かる子はMARCHの付属校を併願することが多い。つまり、どちらに転んでも最終的にMARCHに行く感じです。上位の生徒は早慶というレベル感で、鍛え方次第で大きく変化するポテンシャルのある生徒が集まっています」

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