ミャンマー産の覚醒剤が日本で「価格30倍」 コロナで販路拡大、“麻薬パンデミック”か (2/2) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

ミャンマー産の覚醒剤が日本で「価格30倍」 コロナで販路拡大、“麻薬パンデミック”か

このエントリーをはてなブックマークに追加
増保千尋AERA
摘発チームが密売人から押収した覚醒剤の錠剤「ヤバ」。主にミャンマー北東部のシャン州で製造され、東南アジアで広く流通している(写真:Pat Jasan)

摘発チームが密売人から押収した覚醒剤の錠剤「ヤバ」。主にミャンマー北東部のシャン州で製造され、東南アジアで広く流通している(写真:Pat Jasan)

 さらに近年、ミャンマーで急激に生産が増えているのが覚醒剤だ。広い田畑や複雑な工程がなくても生成できることからミャンマーから密輸される薬物の“主力”になっており、19年には「クリスタル・メス」などの俗称で知られる高純度の覚醒剤が約9.4トンも押収された。

 ミャンマー産のクリスタル・メスはアジア全域に広く出回り、日本にも密輸されている。日本で使われる薬物は覚醒剤が圧倒的に多く、薬物事件の検挙者の8割が覚醒剤事犯。その需要の高さから日本の覚醒剤の密売価格は世界最高レベルで、UNODCによれば、生産国ミャンマーでの価格は1グラム20ドル(約2100円)以下だが、日本では約6万円と約30倍にもなる。密売組織にとって、日本は非常に魅力的な市場なのだ。

 ミャンマー発の薬物密売ネットワークの勢いは、コロナ禍でも決して衰えていない。今年2~4月の間にシャン州では覚醒剤の錠剤が約2億錠、クリスタル・メス約500キロ、合成麻薬の原料となる化学物質約35.5トンなどが押収され、同地域でも過去最大級だったという。

 ミャンマーの元麻薬取締捜査官は、コロナ禍でも密売組織の活動が盛んな理由を「警察が国境でコロナの感染検査にかかりっきりになっているために薬物犯罪の摘発がおろそかになり、密売人たちの動きがより活発になっている」と説明する。

UNODCのジェレミー・ダグラス東南アジア・大洋州局長は、コロナ禍で生じた新たな懸念を記者会見でこう述べた。

「メキシコで合成麻薬の生産量が減れば、北米で供給不足が起こる可能性がある。東南アジアの密売組織はこれを好機ととらえ、北米に販路を拡大するかもしれない。彼らがコロナを気にして商売を自粛することはなく、状況の変化に柔軟に対応する」

 国境を越えた移動の減少により、メキシコでは合成麻薬の原材料確保が難しくなっている一方、ミャンマーは原材料を国内や近隣諸国から調達しているため、生産量が減っている兆候はないという。つまり今後、ミャンマーを震源地にした「麻薬パンデミック」が、世界に広がる可能性があるのだ。(ライター・増保千尋)

AERA 2020年8月31日号より抜粋


トップにもどる AERA記事一覧

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい